スタッフを育てる「発問」の技術

教育方法

普段病棟で

〇〇さんはどう考えた?

〇〇した根拠は?

〇〇ってわかる?

など、後輩の考えや理解を確認するための質問をすることがないでしょうか?

私も後輩にこのような質問をすることがあります。特に新人の頃は毎日これが繰り返されていたと思います。

いい思い出も悪い思い出もあります。

相手が成長できるように質問するには少しコツが必要です。
本日はこのコツについて書いていきたいと思います。

「発問」とは

「発問」とは、簡単に説明すると、教育的な意図を持った問いです。

問う人が自分の中で答えを持っている場合は「発問」

               ない場合は「質問」

と区別することができます。

最初の例にあった、「〇〇さんはどう考えた?」

などの質問も、先輩は後輩の理解を促したいと教育的な意図がありますので「発問」になります。

「発問」はとても伝統的な教育方法です。相手に問うことで、相手を考えさせることができます。「発問」は看護師として働く上で、みんな自然に使っている教育方法なのです。


私事ですが、大学院に入学するまで「発問」なんて全然知りませんでした・・・。大学院の入試に「発問」についてのあなたの考えを記載してください。という問題が出て、わからないなりに何か振り絞って書いたことを覚えています。

「発問」にこだわりすぎない

「発問」を日常的に使用している背景としては、私たちが学生のとき、実習で先生からよく使われてたことがあるかもしれません。
臨床で発問を使うときには、実習の時と同じような感覚で使うとあまりうまくいかないかもしれません。

教員の方々本当に上手に発問を使っていると思います。私も、大学1院で学生の実習に教員として関わったことがありますが、基本的には「発問」が学生と関わるときのとっかかりになります。

患者さんのケアがひと段落したときや、記録をまとめている際などに、

  • どういう経験をしたのか
  • どうやって考えたのか
  • 患者さんはどういう反応だったか

など、学生の反応を伺いながら、実習目標が達成されるような「発問」を心がけました。

ここで感じたのは普段臨床で後輩に関わっている時より学習支援に時間をかけられるということでした。

臨床で教育的な関わりができる時間ってどこにあるでしょう?

私の勤務していた病院は看護提供方式が固定チームナーシングであったので、日々、リーダー役割を担う看護師が配置されていました。

1日2回(昼の休憩前と勤務終了1時間前くらい)、リーダー看護師に報告することが決まっていたので主にその際に、「発問」を使用した学習支援が行われていました。

その他には、新人として入職して3ヶ月くらいは、朝動き出す前にリーダーや新人を担当するスタッフが、今日担当する患者さんの概要を説明するという時間が設けられていました。

このような臨床の場面では、「発問」で相手の意図を確認したり、考えてもらうには時間的に厳しいことがあります。

学生とスタッフでは目標も異なります。

学生では、実習により異なりますが、ケアの技術などの他に看護師としての態度や倫理観なども目標に入っていることが多いです。「発問」によって時間をかけて自分なりに考えてみてほしいということも含まれています。

スタッフとして働く時は、患者さんの治療や処置を予定通りに行う、合併症を早期発見する、自律に向けてケアを行うなど患者アウトカムが目標になります。

なので、臨床で「発問」に長い時間をかけてしまうと、患者さんの治療や処置を予定通りに行うことが難しくなってしまいます。

意図した回答が後輩から返ってこないときは、こちらの考えを伝えることが必要です。自分がどう考えたか後輩に伝えるこては、考え方の見本になります。

時間をかけないといけない時も、もちろんあると思います。その時は、業務を手伝うことなどを保証することが必要だと思います。

わからないままにしない

発問して意図通りの回答が後輩から返ってこない場合、その場で「調べておいてね」などと言ってそのままになってしまうことはありませんか?

これは個人的にはあまり良くないと思っています。

意図した回答が後輩から返ってこないときは、やはりこちらの考えを伝えた方がいいです。

わからないまま患者さんのところに行くことを一番避けてほしいと思います。

これは患者中心であることが学習者中心であることより優先されるという私の考えです。

わからないまま患者さんのところに行っている後輩の気持ちとして考えられるのは、「調べてきて」と言われたことがずっと胸に引っかかったまま仕事をすることになるのではないかと思います。

もしかすると、仕事が終わった後の振り返りにはつながるかもしれません。

この関わりによって、実践のパフォーマンスが落ちてしまったような(昨日は気付けていたのに今日は気付けなかったなど)場面を見たことがあります。

また、実践の中で新しいことに気づいたりするなどの実践中の学びは制約されるかもしれません。

簡単なことであれば、「調べてきて」というより、「一緒に確認しよう」と言った方が早いし、教科書の知識を実践に移すお手本という意味でも学習効果が高いのではないかと思います。

意図を伝える

発問するときの先輩の意図としては、

  • 本当に理解しているか確認したい。
  • 理解を促して後輩に成長してもらいたい。

などがあるかもしれません。

後輩の気持ちはどうでしょう?

  • 理解していることを伝えたい
  • 試されてる
  • 間違ってはいないだろうか
  • 怒られるんじゃないか

状況によって様々だと思いますが、質問する側は相手がどんな気持ちだろうと考えることは必要です。

相手の顔色を伺って相手にとっての正解を言おうとする。

その場を乗り切るために質問に答える。

これを「学習拘束」と言ったりします。これでは学習は促進されません。

お互いの意図を伝えることは、「学習拘束」を解く手がかりになります。

まとめ

「発問」は相手の考えを引き出す教育の方法である。

「発問」に頼りすぎないことも重要。自分の考えを伝えることも同じくらい重要。

「発問」した後、わからないままにしない。学びが制約されてしまうかも。

「発問」の意図を伝える。早くこの場を逃げ切りたいと思われているかもしれない。これでは学習につながらない。

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