4月から2年ぶりに臨床で働くことになり、循環器病棟に配属されました。私にとって初めての異動で、文化の違いや疾病の違いなどにとても困惑しております。一番困っていることが「ものの場所」です。これまでの経験で培った、フィジカルアセスメントや病態生理などの知識も役立ってはいますが、これがわからないとマジで使い物にならなんだなと実感しております。
今回は、そんな私が1週間、どのように学習したのかを理論をもとに振り返っていきたいと思います。学習者として、また、病棟異動者の支援者となっている人、これから始まる新人教育のヒントになることがあれば嬉しいです。
なんとなく教科書やガイドラインを眺める
配属が決まり少し時間があったので、事前に日本循環器学会から出されているガイドラインやINTENSIVISTなどの雑誌を眺めました。難しくてなかなか理解するのに時間がかかりますが、全て理解できなくても、循環器外科や内科でどのような治療がされているのかということをなんとなく知ることができればいいなと思いました。雑誌やガイドラインのいいところは比較的新しいトレンドを知ることができるという点だと思います。また、参考文献が非常にしっかりしているところも好きです。
私が大切にしたのは、理解できる範囲で、なんとなく、あんなことがこんなところに書いてあったなぁと頭の片隅に入れておくことです。
このような教科書的な知識は理論的知識・宣言的知識などと呼ばれます。これがわかれば実践で力を発揮できるかというとそれは少し違います。実践の中で知識を活用することを実践知・手続き的知識といいます。
ガイドラインや教科書をなんとなく眺めるという私の行為は、今後必要になる理論的知識・宣言的知識がどこに記載されているのか確認をしていたということになります。
いよいよ実践!自分からフィードバックを受けにいく
幸福なことに、7日間、先輩が1対1で支援してくれるということだったので、なるべく重症な患者さんを担当させてもらえるようにお願いしました。また、(心不全などの内科系疾患は経験があったため)外科の患者さんを担当できるようお願いしました。(勉強の為とはいえ、めちゃくちゃ疲れました。)
先輩にはできるだけ、自分のアセスメントを聞いてもらうようにお願いしました。動き始める前に、患者さんのサマリー、特にどこに注意するのか、今日の患者さんにとっての目標は何かなどです。
この中でのポイントは、特にどこに注意するのか、今日の患者さんにとっての目標は何かという点です。
特にどこに注意するのか 網羅的な理解から焦点化へ
ベナーはこれを重要性・非重要性の識別といっています。他にはタナーの臨床判断モデルの『気づき』に当たります。この特にという点は、実践知・手続き的知識に富んでいます。
どこに注意しなければならないかは教科書にはもちろん載っていますが、網羅的です。既往歴や背景などによってその時に注意しなければならないことは異なります。実践知が豊富な先輩の視点は網羅的ではなく焦点化されています。このどこに焦点をあてるかという点をお互いに言語化しながら言葉の意味を共通の認識にしていくことで、私の実践知は蓄積されていきます(ショーンの省察的実習:ついてきなさい)
これを家に帰ってから、教科書や雑誌、ガイドラインのどこに記載されていたか確認することで、例えば今日の状況とどこが違えば、注意するポイントが変わるんだろうと妄想する。それによって理論的知識・宣言的知識も確認しながら、実践知・手続き的知識についても振り返ることができます。
これを翌日、また先輩と話してみる。こんな感じの1週間を過ごしました。
今日の患者さんにとっての目標は何か 全体の把握と臨床的想像力
もうひとつは予測です。心臓の手術をした人がどのような経過をたどって大体何日くらいで退院するのか。今のところ私には全然予測がつきません。これが非常に困ります。とくに今日患者さんがどうなれば良いか、そのためにどんなケアをすれば良いか考えることが難しくなります。なので、この患者さんが順調に行けば、どのくらいで退院するんですか?みたいなことを非常にたくさん先輩たちに聞きました。
この予測をベナーは臨床的想像力と言っています。また、ベナーの一人前レベルや中堅レベルになると、この全体の状況を捉えることができると言っています。
これも同じように先輩とお互いに言語化し話してみることで、私の省察は進んでいきます(ショーンの省察的実習:ついてきなさい)。
先輩に恵まれただけ? いやいや教育は相互作用
非常に大変な5日間でしたが、先輩からたくさんのことを学習できました。もちろん先輩に恵まれたのもあります。とても素晴らしい先輩でした。上から目線で感じが悪いですが・・・このようなやりとりは、先輩の力だけではうまくいきません。
私も先輩から学びたいと思っている。自分からフィードバックを受けようと思っていることが重要です。
先輩の発言が役に立ったと思ったら、大きくうなずいたり、先輩の発言を踏まえて自分の理解をさらに伝えてみる。このような行為で先輩の教育的な関わりは強化されていきます。具体的には、やりとりの中で、わからないことはわからないと言ってくれる(誰に聞いてみるといいとアドバイスもくれる)。こんな時は特に注意してるというポイントをたくさん話してくれる。最も注意しなければならない合併症などを事前に知らせてくれる。などです。このようなやりとりの中で、私は先輩の関わりを強化したと思います(徹底的行動主義の四項随伴を参考にしたやりとり)。
教育は相互作用です。ショーンがいうようにお互いの考え方で省察は進みもするし制約もされます。
相手が嫌な先輩だったとしても、学習者としての自分の関わりで相手の支援のいい点を引き出すことができるかもしれません。
まとめ
私はやはり臨床判断を思考発話することが大好きです。私の学習(省察を深め、実践知・手続き的知識を獲得すること)にもつながりますし、何より臨床判断には病棟の文化やその人の経験から培った背景などが含まれてます。お互いに臨床判断を思考発話することで、相手がどのようなことを大切にしているか、知ることができます。
私は、中間管理職としての役割もありますので、病棟のいいところや改善しなければならないポイントなども臨床判断には含まれていると思います。
何を聞いても怒られない無敵状態の今だからこそ(笑)、先輩だけでなく後輩ともたくさん臨床判断を共有することを通して、この病棟を理解していきたいと思いました。
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